嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 遥臣がなにを言いたいか分からず瞳を揺らす美琴。手首から掌の熱が伝わってきて、いとも簡単に鼓動が速くなっていく。久しぶりに彼に触れられたせいかもしれない。

「君は、優しいな」

「遥臣さんの健康に気を配るのも、私のお仕事ですから」

 本音は違う。仕事もお金も関係なく遥臣の体調が純粋に心配で、病気で寝込む想像をするだけで辛いのだ。
 しかしそれを口にしたら、余計な気持ちまで一気に溢れてしまいそうで美琴はあえて割り切ったふりをする。

「そうか、美琴にとっては仕事だよな……だったらこういうのも、仕事だって割り切れる?」

「えっ」

 言葉の意味を理解する前にグイっと手首が引かれ、遥臣の顔が近づく。そこにある切羽詰まった表情に美琴は目を瞬かせた。

「遥臣さ――んっ」

 言い終わる前に大きな手が後頭部に回り、引き寄せられたと思った刹那、唇がふさがれた。

 美琴の耳から部屋からすべての音が消え去る。
 彼の柔らかい唇の感触に、自分が口づけされていると自覚するまで数秒。
 
 混乱する美琴をよそに、遥臣は角度を変えて口づけを続ける。
 まるでこれまでずっとこうしたかったと伝えるかのように。

「……美琴」