嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 優しい笑みを浮かべた遥臣が、スッと病室に入ってくる。

「ねぇ先生、みこっちモテてるよー。おじさんにだけど」

「それは妬けるな」

「すみません先生、陽菜の悪ふざけです……」

「いえ、お気になさらず」

 父娘に柔らかい表情を向ける遥臣。“妬ける”なんて言葉を使ったがまったく意に介していないサラリとした口調だ。

(陽菜ちゃんの冗談だもの。気にするはずないよね)

 妻の話題だからしかたなく軽口に乗っているだけで、本来美琴がモテようがモテまいが彼には関係ないのだ。そう考えるとなぜか胸が軋む。

(……なに考えてるの、遥臣さんはお仕事中なのに)

 その大事な仕事をすべく、遥臣は陽菜の父に向き直った。

「横沢さん、さっそくお話いいでしょうか」

「――はい、お願いします」

 陽菜の父の表情が、真剣なものに変わる。

「あっ、私は一旦失礼しますね」

 慌てて腰を浮かせた美琴は、すぐに病室をあとにするのだった。



 その日の夜、遥臣はいつもの時間に帰宅し食事をとった。

 キッチンを片付け、食洗機のスタートボタンを押す。静かな駆動音を聞きながら美琴は入浴中の遥臣を気にしていた。