嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

「ごめんね、ちょっと早かったね」

 陽菜の父は笑顔で「どうぞお入りください」と立ち上がり、美琴のためにパイプ椅子を出してくれる。

 申し訳なく思いつつ、美琴は病室に入った。

「ありがとうございます……お父さんも今日はお早いんですね」

「今日はこのあと瀬戸先生から治療計画についてお話があるので午後休みました。手術、来週の金曜に決定したので」

「来週……」

 陽菜の父の言葉に美琴は小さく息をのむ。

(そっか、いよいよ……)

「正直言うとちょっと怖いけど、瀬戸先生だもん。ちゃーんと治してくれる」

 陽菜は笑みを浮かべているが、頭の手術だ。本当はちょっとどころでなく怖いに決まっている。

「うん、大丈夫よ。瀬戸先生すごーく優秀なお医者様だから」

 美琴は笑顔で陽菜の手を握る。

「あれー、旦那さんのノロケですか?」

 陽菜の笑顔がからかうようなものに変わっている。

「もう、なに言ってるの」

「瀬戸先生も、よくみこっちの話でノロケてるよ。昨日のご飯がおいしかったとか、お笑いを見て吹き出している顔がかわいいとか」

(は、遥臣さん……!)