嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 言われてみると、彼とこの銀杏並木を歩いているとき、迷子になった3歳くらいの女の子を見つけて保護した記憶がある。

「そういえば、本部まで連れていきましたね」

「君は綺麗な服が汚れるのも構わずしゃがみ込んで、泣きじゃくるその子に『大丈夫だよ、絶対ママに会えるから』って笑いかけてた」

「そうでしたっけ……」

 本部についてすぐに母親が見つかり、胸を撫でおろした記憶はあるが、細かいことは覚えていない。

「美琴は昔のことを気にするあまり、過去をぜんぶ否定してしまってるんじゃないか? それに、過去があるから今の君がいるんだろう?」

「遥臣さん……」

 彼の声は静かで温かい。過去ごと今の美琴を認めてくれているような優しさで胸が震え、なんて答えたらいいか分からない。

「あと、誤解しているみたいだけど、俺は君を嫌いだと思ったことはない。だから謝る必要もないよ」

 てっきり遥臣に恨まれていたと思っていた美琴は、まさかの言葉に目を瞬かせる。

(私、嫌われてないの……?)

 目を細めた遥臣の大きな掌が美琴の頬を撫でた。

「むしろ、今は君と結婚できてよかったと思ってる」