嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 三田はおどけたように振り返る。視線の先には彼女の夫とみられる男性が小さな子どもを抱っこしている。誠実そうな顔つきをした男性はこちらに気付き会釈してくれた。

「あなたたちも結婚おめでとう。じゃあね!」

 そう笑うと三田は家族の元に戻っていく。その後姿を見送りながら美琴こっそり溜息をついた。

(三田さんと話せて良かった。ずっと心に引っかかっていたから)

 安堵する一方、複雑な気持ちが美琴の胸を疼かせる。彼女は美琴のしたことなど気にしていなかったし、昔を笑い飛ばす余裕まであった。

(私なんかより彼女の方が、人としてのレベルが上だった……違う。レベルとかの発想自体が間違えてるんだ)

 過去も今もいかに自分が小さい人間かを痛感する。

「そろそろ俺たちも帰ろうか」

「あ……はい」

 遥臣に促されるまま、銀杏並木を進んでいく。

(遥臣さんだってそう。こうやって三田さんに会っても昔に触れないでいてくれる)

 彼は結婚生活が始まってからは昔の美琴の所業に関して一切話題にしない。でも、思うところはあるはずだ。

 美琴は足を止めて、繋がれていた手を放す。

「どうかした?」