嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 美琴がお笑いを見るようになったのは家族と離れ独り暮らしになってからだ。
 ガラリと変わった生活になかなかなじめないなか、ふと目にしたのがテレビ局が公開した年末の漫才コンテストの決勝の動画だった。

「玉クラが今日もやってたファミレスのネタを見たのがきっかけで。ちょうどそのころ私もファミレスでバイト始めていて、まともに仕事ができなくて。怒られてばかりで落ち込んでたんですけど、彼らのネタを見て思わず笑っちゃって、少し気が晴れたんです」

 玉ねぎクランチは惜しくも準優勝だったが、それから彼らのネタはチェックしている。理屈抜きに笑顔になれるお笑い自体も好きになった。

「今日みたいな機会がなければ、生で見ること無かったと思います。遥臣さん、ありがとうございました」

 座った席はステージに近く見やすかった。きっと手を回していい席を手に入れてくれたのだろう。
 彼がここに連れて来てくれたのは、やはり美琴を楽しませるためだったのだ。心からの感謝を伝える。すると遥臣は美琴の手を取った。

「よかった」