嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

「応際医学部伝統のたこ焼き! めっちゃうまいです! おひとついかがですか?」

「医学部伝統?」

 隣に視線をやると遥臣はうなずく。

「昔から医学部は1、2年生がたこ焼き屋を出す伝統があるんだ。懐かしいな。俺も昔手伝った思い出がある」

 テントの下では調理担当の学生たちが、いくつものくぼみが並んだ鉄板の前でたこ焼きを焼いていた。ピックで器用に回す様子に思わず目を奪われる。考えてみたら、たこ焼きを作る様子を見たのは初めてかもしれない。ひっくり返されながら湯気を上げる様子はものすごく美味しそうだ。

「じゃあ、ぜひとも売り上げを上げないと」

「ああ、せっかくだから食べようか」

 遥臣の同意を得た美琴はアフロの男子学生に声を掛ける。

「ふたついただけますか」

「あざっす! 千円になります!」

 元気な声が返ってきて顔がほころぶ。もしかしたら遥臣もこうやってたこ焼きを焼いたり呼び込みをしたりしたのだろうか。アフロの被り物はさすがに無かったと思うけれど。

「つーか、マジで綺麗っすね」

 財布を取りだしている美琴の顔をアフロの男子学生が頬を染めて見つめている。

「ふふ、もっと買わないとダメかしら?」