嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 聞いたとしても医者の守秘義務があるから答えないだろうし、自分といるときくらいは仕事を忘れてほしい気持ちもあった。

「ライブまではまだ時間があるから何か食べましょうか」

 学園祭の目玉であるお笑いライブは大講堂で行われる。有名芸人が3組も出演するのでサイト上ではチケットはすでに売り切れていたのだが、遥臣の伝手で入手できたらしい。

(遥臣さんに手間をかけさせてしまったけど、ちょっと、いや、かなり楽しみ)

 美琴はクラッシックコンサートやバレエの舞台、美術などは教養として鑑賞してきたが、それ以外のもの、例えばアイドルやミュージシャン、アニメなどには触れた経験がないまま育った。

 祖母に“庶民的なものに触れる必要はない”と、遠ざけられていたからだ。

(芸人さんのお笑いライブを見に行きますって言ったらおばあさま、卒倒しちゃいそうだな)

 苦笑していると、大きな声が聞こえてきた。

「そこの美人のお姉さん! たこ焼きいかがですか」

 調子のいい声とソースの焦げる食欲をそそる香りに惹かれて目を向けると、真っ赤なアフロヘアのかつらを被った男子学生が屋台の前に立ち、メガホンで呼び込みをしていた。