嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 角の陰に隠れたまま通りすぎる遥臣たちを見送る。

(患者さん、大丈夫だといいんだけど……)

 美琴はふぅ、と溜息をつく。それにしても、遥臣のあんな顔初めて見た。

 同じ仕事中でも、陽菜に話しかけるときの柔らかい笑顔とはまったく違う厳しい表情。今さらだが遥臣は命の現場で戦っているのだ。

(不謹慎かもしれないけれど、今の遥臣さんの真剣な顔つきは……)

「――素敵」

「わっ!」

 背後から思いがけない声がして美琴はビクンと肩を揺らす。慌てて振り向くとそこには清香が立っていた。

「き、清香さん」

 清香は廊下の奥を見てうっとりと目を細めている。

「きっと、外来に来ていた患者さんが急変したのね。でも、瀬戸先生が診てくださるならきっと大丈夫よ」

「……はい」

 どうか、快方に向かいますように。そう願いながら美琴は頷いた。

「それで、なんであなたはこんなところにいるの? この先は病院関係者以外立ち入りできないわよ」

「ごめんなさい。迷ってしまって。すぐ戻ります」

 肩をすぼめる美琴に清香は呆れた表情を向けた。

「ねぇあなた、一般の家の出身って言ってたけど、ご両親はなにをされているの?」