嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

(陽菜ちゃんなら、学校に戻ってもすぐに遅れを取り戻せる。目標の高校だって入れるかもしれない。もちろん、治療が第一だけど)

「あら?」

 問題の解説をしていた美琴は、視線を感じて顔をあげる。デイルームの入口に小学校低学年くらいの男の子が立っていて、こちらを興味深げに見ていた。

「こんにちは」

 目が合ったので微笑むと、慌てたように逃げてしまった。それを見て陽菜がポツリと零す。

「今の子、私が入院した時からいるから、結構長く入院しているんだと思う」

「そっか……」
 ここに通い始めて気づいたのは、陽菜のように、もしくはそれ以上長く入院している子どもがいることだった。しかし、南田国際病院には院内学級のような学習支援施設はない。

 もちろん病院は病気を治す場所だが、それぞれの子どもの病状にあわせて学べる施設や制度があってもいいのではないか。
 親から離れている寂しさや、不安に耐えてがんばっている子どもたちが、闘病以外で一生懸命になる時間を少しでも持てたら、また前向きに治療に取り組めるかもしれない。

 美琴は男の子がいなくなった場所を見つめた。