嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 その後主治医の許可をとってもらい、先週から週に三回、短時間の約束でこうして病院を訪れている。

(陽菜ちゃんのサポートはしっかり続けるとして、本当にそろそろ再就職先を決めないと)

 実家への仕送りが止まったら、両親が心配する。かといってまとまった貯金があるわけでもない。

 次の就職先は、なるべく長く勤められる安定した会社がいいと思っていたが、選んでいる余裕はないかもしれない。

 暗い気持ちで廊下を歩いていた美琴は、いつの間にか見覚えのない場所に立っていた。
 この病院はいくつか棟があり、それぞれが廊下で繋がっているのだが、どうやらぼんやりして行くつもりのない棟の廊下まで進んでいたようだ。しかたなく、近くにあった階段で下の階に降りる。

(あれ、ここどこ?)

 1階に下りればなんとかなるだろう思っていたら、裏庭をのぞむやけに静かなスペースに来てしまった。

(考え事しながら歩いちゃだめよね……完全に迷った)

 やれやれと思いつつ、どうしたらいいか周囲を見回した美琴は奥に人影がいるのに気づいた。若い女性と、背が高い白衣の男性の後姿。