嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 智明は祖母のお気に入りで、子どものころからよく平林家に出入りしていた。

 七歳年下の美琴をかわいがってくれたが、やけにボディータッチが多かったし、成長するにつれ、ねっとりした視線を向けられ、気持ち悪さを感じた美琴は距離をとるようなった。
 簡単に言うと生理的に合わないのである。

 そして智明は今も絡みつくような視線でこちらを見つめている。

「お久しぶりです……驚きました。なんで智明さんがここに?」

 背筋に寒気を感じながら、なんとか取り繕う。

「僕もこのホテルで別のパーティーに来ていたんだ。偶然でも会えて嬉しいよ」

 僕も、という言い方に違和感を覚える。まるで、美琴がここでパーティーに出席しているのを確信しているかのようではないか。それに、少なくとも同じフロアで他のパーティーが行われている様子はない。

「ああ、それにしても美しいな。まるで、昔の君を見ているようだ――僕が贈ったドレスでないのが気に入らないけれど」

 陶然とした笑みを深めながら、智明はさらにこちらに近づいてきた。ジリッと後退りしたものの、すぐに二の腕に手がかかった。