嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 美琴はハッとする。この状況で彼の親族に会うのはまずい。しかし気づくのが遅すぎた。

「あれ……あなたもしかして美琴ちゃん?」

 ススッと遥臣のうしろに隠れようとした美琴の顔を見て、理恵子は首を傾げた。

「……理恵子おばさま、お久しぶりです」

 観念して挨拶すると理恵子は目を丸くする。

「やっぱり美琴ちゃんよね。なんで遥臣と一緒に……え、まさか婚約者って美琴ちゃんなの? あなたたちの婚約、とっくに解消されてたわよね?」

 だんだんトーンが高くなっていく理恵子を遥臣がなだめようとする。

「理恵子さん、少し声押さえて……いろいろあって」

「いろいろって?」

 すかさず突っ込んでくる理恵子に、遥臣は深い溜息をついた。

「……説明する。ちょっと来て」

「聞こうじゃない」

「じゃ、じゃあ私、お化粧を直しに行ってきますね」

 会話を聞かれないように会場の隅に移動するふたりに声を掛け、美琴は離脱することにした。

 トイレをすませ、広いパウダールームで時間をかけながら丁寧にメイクや髪を整える。

(あぁ、びっくりした……でも、理恵子おばさまなら大丈夫なはず)