「あらかた挨拶はすんだし、もう少ししたら車で送っていくよ」
「いえ」
このドレスをホテルのサロンに返さなければならないし、自分で電車を使って帰ろうと思っている。そう伝えようとしたとき、遥臣に声を掛けてきた人物がいた。
「あーいたいた。遥臣、久しぶり!」
駆け寄ってきたのはスーツ姿の50代くらいの小柄な女性だった。
「理恵子(りえこ)さん、なんでここに? 札幌にいたはずじゃ」
遥臣は驚いたような声を出した。
美琴は彼女を知っている。瀬戸理恵子、遥臣の父の妹で整形外科医だ。婚約中、瀬戸家を訪問したときに何度か会っている。
「兄さんに頼まれて来月から瀬戸中央病院に戻るの。そこの整形外科を担当しながら、週一で南田の嘱託医もすることになったから、今日はちょっと顔出しにきたところ。間に合って良かったわ」
「知らなかった。連絡してくれてもよかったのに」
遥臣言われて理恵子は「驚かそうと思ってたの」といたずらっぽい顔になる。整った目元は遥臣に少し似ている。
「ねぇ、それより、さっき外科部長に『甥御さんのご婚約おめでとうございます』っていわれたんだけど、どういうこと?」
(しまった……!)
「いえ」
このドレスをホテルのサロンに返さなければならないし、自分で電車を使って帰ろうと思っている。そう伝えようとしたとき、遥臣に声を掛けてきた人物がいた。
「あーいたいた。遥臣、久しぶり!」
駆け寄ってきたのはスーツ姿の50代くらいの小柄な女性だった。
「理恵子(りえこ)さん、なんでここに? 札幌にいたはずじゃ」
遥臣は驚いたような声を出した。
美琴は彼女を知っている。瀬戸理恵子、遥臣の父の妹で整形外科医だ。婚約中、瀬戸家を訪問したときに何度か会っている。
「兄さんに頼まれて来月から瀬戸中央病院に戻るの。そこの整形外科を担当しながら、週一で南田の嘱託医もすることになったから、今日はちょっと顔出しにきたところ。間に合って良かったわ」
「知らなかった。連絡してくれてもよかったのに」
遥臣言われて理恵子は「驚かそうと思ってたの」といたずらっぽい顔になる。整った目元は遥臣に少し似ている。
「ねぇ、それより、さっき外科部長に『甥御さんのご婚約おめでとうございます』っていわれたんだけど、どういうこと?」
(しまった……!)



