嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

「陽菜ちゃんがそこまで言うくらいかっこいいなら、いつかお会いしてみたいわね」

 笑顔で話を合わせながら、美琴は陽菜の病室まで付き添った。



 陽菜と別れたあと、病院の出口に向かって長い廊下を進む。

(病気の陽菜ちゃんに心配されてるなんて、情けないなぁ)
 
 美琴は現在27歳にして失業中の身である。ハローワークに通い、転職サイトでも情報収集しているが、なかなかこれというものがない。その中でもいいと思ったものにエントリーし、面接までいったものの今朝、不採用の通知が来た。

(落ち込んでる場合じゃないんだけど……)

 美琴は人知れず溜息をつく。
 経営難に伴う人員整理を理由に、二年間勤めていた学習塾を辞めさせられたのは一か月前。
 自分なりに生徒のために頑張っていたつもりだったから、かなりショックだった。

 退職後まもなく教え子だった陽菜の入院を知り、見舞いに行ったところ、彼女の父親に定期的に学習指導をしてくれないかと頼まれた。

 どうやら、陽菜の病気は数か月の入院が必要になるらしいのだ。

 美琴は喜んで引き受けた。学習面だけでも陽菜の不安が減らせるのなら役に立ちたかった。