「彼女は努力家で優秀で、心も優しい」
(は、遥臣さん……!)
どうやら遥臣は、婚約者が愛しくてしょうがないフリをするという荒業でこの場を乗り切ろうとしているらしい。
顔を熱くしながらも、美琴は彼の腕の中でか細い声を出す。
「あの、至らないところはありますが、がんばりますので……」
(そして遥臣さん、恥ずかしいのでこの腕を外してください……!)
「あなた。好き合うふたりに野暮なことを言うものじゃないですよ。ごめんなさいね、この人、どうしても清香を瀬戸先生と結婚させたかったものだから、面白くなかっただけなの」
明るい声を上げたのは夫人だ。すると、院長は眉間に皺を寄せたまま「そうだな」と溜息をついた。
「瀬戸先生にこんな情熱的な面があるなんて驚いたよ、余計なことを言ってすまなかった」
院長はやれやれという表情で娘に視線を向けた。
「清香、残念だが縁がなかったな」
「お父さん……」
青い顔で立ちつくす清香の背中を夫人が慰めるように擦っている。
「ありがとうございます。これからも南田国際病院の医師として尽力します」
彼らに向かって遥臣は笑顔を向けた。
(は、遥臣さん……!)
どうやら遥臣は、婚約者が愛しくてしょうがないフリをするという荒業でこの場を乗り切ろうとしているらしい。
顔を熱くしながらも、美琴は彼の腕の中でか細い声を出す。
「あの、至らないところはありますが、がんばりますので……」
(そして遥臣さん、恥ずかしいのでこの腕を外してください……!)
「あなた。好き合うふたりに野暮なことを言うものじゃないですよ。ごめんなさいね、この人、どうしても清香を瀬戸先生と結婚させたかったものだから、面白くなかっただけなの」
明るい声を上げたのは夫人だ。すると、院長は眉間に皺を寄せたまま「そうだな」と溜息をついた。
「瀬戸先生にこんな情熱的な面があるなんて驚いたよ、余計なことを言ってすまなかった」
院長はやれやれという表情で娘に視線を向けた。
「清香、残念だが縁がなかったな」
「お父さん……」
青い顔で立ちつくす清香の背中を夫人が慰めるように擦っている。
「ありがとうございます。これからも南田国際病院の医師として尽力します」
彼らに向かって遥臣は笑顔を向けた。



