嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 少しの間のあと、遥臣はそつのない笑みを浮かべた。

 そのあとも美琴は遥臣と連れ立ち、看護師長や事務長、一般職員にも挨拶して回る。

(今のところ、みなさんに好意的に受け入れてもらえているみたい)

 ほっとしながら、オレンジジュースで喉を潤す。

「いいタイミングだ、そろそろ院長夫妻のところに行こうか。ちょうど清香(きよか)さんもいる」

 遥臣の視線の先を見ると、貫禄のある雰囲気の男性が着物姿の女性と若い女性と共に立っていた。院長夫妻、そして娘の清香だ。周りに人がいなくなった今がチャンスだろう。

(いよいよラスボスね……)

 美琴は遥臣にエスコートされながら気合を入れなおした。

 遥臣は夫妻と清香に声を掛け、軽く挨拶を交わしたあと後ろに控えていた美琴に視線を向けた。

「こちらが婚約者の平林美琴さんです」

 その途端、清香の顔つきがきつくなる。

 クリームイエローの清楚なドレスを身に着けた清香は25歳と聞いている。遥臣に告白していたときに感じた印象のままのかわいらしい女性だが、今は敵意に満ちた視線を美琴に向けていた。

 気付かないふりをしつつ、美琴は一歩前へ出る。