彼の中の美琴は人の気持ちも思いやれない、自分中心の高飛車な女のままなのだろう。
(……でも、今は違う)
美琴の心の中で、小さな反発心が生まれる。
すべて失い己の愚かさに気づいたあとは心を入れ替え、自分の力で必死に生きてきたつもりだ。
うまくいかないことも多いが、少なくとも美琴は今の生き方を恥じていない。
ちょっとだけ言い返してもいいだろうか。そう思って見た遥臣の顔つきは真面目だった。
「――頼むよ、元婚約者のよしみで」
どうやら本当に困っているらしい。ここまで真剣に頼まれるとどうも断りづらい。それで少しでも元婚約者の役にたてるのならいいのかもしれない。
(だったら、立派に婚約者を演じきってやろうじゃないの)
開き直った美琴は結局了承してしまうのだった。
あっという間にやってきたパーティー当日。
美琴は遥臣に指定されたホテルのサロンでヘアメイクとメイクを施してもらい、ドレスに着替えた。
(わぁ、すごいいい生地を使ってる。仕立ても繊細)
スカートの部分が総レースになっている深い海の色のような濃いブルーのドレスは、華やかだが上品さもある。間違いなく高級品だ。
(……でも、今は違う)
美琴の心の中で、小さな反発心が生まれる。
すべて失い己の愚かさに気づいたあとは心を入れ替え、自分の力で必死に生きてきたつもりだ。
うまくいかないことも多いが、少なくとも美琴は今の生き方を恥じていない。
ちょっとだけ言い返してもいいだろうか。そう思って見た遥臣の顔つきは真面目だった。
「――頼むよ、元婚約者のよしみで」
どうやら本当に困っているらしい。ここまで真剣に頼まれるとどうも断りづらい。それで少しでも元婚約者の役にたてるのならいいのかもしれない。
(だったら、立派に婚約者を演じきってやろうじゃないの)
開き直った美琴は結局了承してしまうのだった。
あっという間にやってきたパーティー当日。
美琴は遥臣に指定されたホテルのサロンでヘアメイクとメイクを施してもらい、ドレスに着替えた。
(わぁ、すごいいい生地を使ってる。仕立ても繊細)
スカートの部分が総レースになっている深い海の色のような濃いブルーのドレスは、華やかだが上品さもある。間違いなく高級品だ。



