嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 病院関係者が一堂に会する場で美琴を婚約者として帯同、アピールして、院長の娘を含めた面倒な縁談を一掃したいという。

「なるほど、そういうことですか」

 すべてを理解した美琴は、ふぅと溜息をつく。自分は即席の婚約者にちょうどいいと思われたのだろう。

(申し訳ないけどやりたくない。ていうか無理……うん、断ろう)

 爪の先まで完璧に手入れしていた昔ならまだしも、今の自分は見目麗しい遥臣の隣に立つなんてとてもできない。

「ごめんなさい。今の私じゃ遥臣さんの婚約者なんて大役、フリであろうと務まりそうもないです」

「なぜ? そんなことないだろう」

 はっきり断ったのに、意外そうな顔で聞き返してくる遥臣。こちらとしてはその表情が意外だ。見てわからないのだろうか。

「えっ? 今は私、こんなですし、パーティに着ていく服もありません」

「それなら当日の手筈はぜんぶこちらで整える。もちろんドレスも」

 即答だ。遥臣は引く気配がない。

「でも」

「昔より落ち着いた雰囲気になっただけで、君は相変わらず綺麗だ。十分務まるよ」

「え……」

 ついドキリとしてしまった美琴だったが、続いた言葉に言葉を失う。