嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

「しがらみがある面倒な結婚はしたくない。そもそも結婚願望自体ないんだ。でもそうとは言えないだろう? でも、あの病院にはもう少しいたいから彼女との交際も結婚も穏便に断りたい」

 南田国際病院は脳外科の分野で国内トップレベルの設備と技術を保有しているから、遥臣はこのまま脳外科医として経験を積みたいという。

「それだけじゃなくて、他にもいくつも縁談が来ているんだ。病院の利権絡みばかりだけどね」

 遥臣はやれやれといった顔をする。一方美琴はポカンとするしかなかった。

 とりあえず彼がとんでもなく優秀な医師で、結婚願望もないのに断りづらい縁談が山のように来て困っていることは分かった。

(結婚願望が無いって、きっと、しがらみしかなかった私との婚約で嫌気がさしたのね……)

 でもなぜ、美琴が婚約者にならなければいけないのかが理解が追い付かない。
 美琴の訝しげな顔に気づいたのか、遥臣は大きな手をゆっくりと組みながら続けた。

「婚約者といっても、もちろんフリだけでいい。週末、南田国際病院の創立30周年を祝うパーティーがあるから、そこで俺の婚約者を演じてほしいんだ」