嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

「僕らは親同士が知り合いで幼馴染なんだ。大人になってからはずっと会っていなかったから驚いたよ」

 そう言いつつも、彼の表情に驚いている様子はまったくない。

「そ、そう、幼馴染なの! それにしても遥臣さんが陽菜ちゃんの主治医だったなんて、びっくりしたわ」

 自分たちが元婚約者なんて、余計な説明をする必要はない。美琴はあわてて遥臣に話を合わせる。

「僕も、陽菜ちゃんに学習指導に来ているのが美琴さんだなんて思わなかったよ」
 ふたりの会話を聞いた陽菜は目を輝かせている。

「すごい! これが『世間は狭い』ってやつだね!」

「あはは……そうだね」

 今はその狭さが恨めしい。そう思っていると、遥臣は笑顔のまま続けた。

「美琴さん、学習指導のあと時間ある?」

「えっ」

「僕ももう少ししたら退勤だから、食事でもどうかな。せっかく久しぶりに会ったんだし」

 思いがけない申し出に、美琴は困惑する。できればお断りしたい。

「でも……」

「先生、大丈夫だよ。みこっち今無職だし、趣味もお笑い見るくらいで彼氏もいないから」

 断る理由を考えている内に、陽菜が余計なことを口にする。

「ちょ、ちょっと陽菜ちゃん!」