嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

「はいはい、戻るんでしょ。どうせこのあとみこっちとお勉強だし、大丈夫だよ」

「ごめんな。明日の夜早めに来るから」

「うん、でも無理しなくていいよ。おばあちゃんもきてくれるから。ほら、会社の人困ってるんでしょ。早く行きなよ」

 娘に促された陽菜の父は、美琴に「よろしくお願いします」と声をかけてから急ぎ足で病室を出て行った。

(陽菜ちゃん本当にしっかりしてるなぁ。お父さんのフォローまでして)

 感心した美琴は陽菜の方を窺って――ハッとする。開らきっぱなしの扉の向こうを見つめる表情に寂し気な感情を見つけたのだ。

(違う……陽菜ちゃんは、大人たちに気を遣わせないように明るく振舞っているだけなんだ)

 元気に見えていても、入院して投薬を続けなければ病状はすぐに悪化し、倒れかねないと聞いている。長期に学校を休まなければならないのも不安だろうし、手術だって怖いに決まっている。

 ただそれを口に出したら、周りを困らせると思ってひとり堪えているのだ。中学二年の女の子が。

 胸が苦しくなった美琴は、思わず陽菜の手を取っていた。

「みこっち?」