嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

「わぁ、すごい。こんな場所が近くにあったなんて知りませんでした」

 天気が良く、眼下には松本市街、遠くに目をやると12月の雪をかぶった北アルプス連峰が見渡せた。穴場なのか、周りには人けがなく、絶景をふたりだけのものにしているかのような贅沢な気持ちになる。

「寒くない?」

 遥臣は美琴に寄り添うように立ち、手を握った。

「……はい」

 長野の寒さは東京より厳しいはずなのに、今は不思議と寒さを感じなかった。

「ストーカーの件、黙っていてすまない」

 遥臣は静かに話し出した。やはり彼は智明から美琴を守るために結婚話を持ち出したらしい。盗聴器の話も事実だった。

「半年前、あの男は業者に依頼して美琴の部屋に仕掛けていたようだ」

 理恵子の伝手で警備会社の調査部門に依頼し、証拠を揃えているところらしい。

「そうだったんですね……」

 あらためて自分の独り言や生活音を聞かれていた事実に嫌悪感でゾッとする。

「君を、怖がらせたくなかった……でも最初から事実を言うべきだったのかもしれない」

 遥臣は自分が理不尽な目にあったかのように、辛そうに顔を歪める。

「いえ、守ってくれてありがとうございました」