平林家からの申し出を瀬戸家が受け入れ、婚約は円満に解消されている。
別に遺恨を残しているわけでもないから、逃げも隠れもする必要はない。
しかし遥臣との婚約は、わがまま令嬢だった己の漆黒の歴史そのものでもあるので、できることなら思い出したくない。
「……それより、仕事を探さないと」
気持ちを切り替えて、転職サイトを見ようと手にしたスマートフォンが、タイミングを見計らったように震えだした。
画面に表示された名前を見て、美琴は心の中で溜息をついた。
出ないわけにもいかず、しぶしぶ応答をタップする。
「――はい」
『美琴ちゃん、ひさしぶり。元気だった?』
耳に響く明るい声。彼は篠宮智明35歳。祖母の実家、篠宮家の当主の次男で、美琴にとってはとこにあたる。
今智明は篠宮家の営む会社で彼の父と兄の仕事を手伝っていると聞いている。
平林家は没落後、篠宮家から縁を切られていたが、智明だけは頻繁に美琴に連絡を取ってくる。
彼は久しぶりと言ったが、実際最近は週に数回電話を受けている。
『相変わらず仕事は順調?』
「……はい、お陰様で」
別に遺恨を残しているわけでもないから、逃げも隠れもする必要はない。
しかし遥臣との婚約は、わがまま令嬢だった己の漆黒の歴史そのものでもあるので、できることなら思い出したくない。
「……それより、仕事を探さないと」
気持ちを切り替えて、転職サイトを見ようと手にしたスマートフォンが、タイミングを見計らったように震えだした。
画面に表示された名前を見て、美琴は心の中で溜息をついた。
出ないわけにもいかず、しぶしぶ応答をタップする。
「――はい」
『美琴ちゃん、ひさしぶり。元気だった?』
耳に響く明るい声。彼は篠宮智明35歳。祖母の実家、篠宮家の当主の次男で、美琴にとってはとこにあたる。
今智明は篠宮家の営む会社で彼の父と兄の仕事を手伝っていると聞いている。
平林家は没落後、篠宮家から縁を切られていたが、智明だけは頻繁に美琴に連絡を取ってくる。
彼は久しぶりと言ったが、実際最近は週に数回電話を受けている。
『相変わらず仕事は順調?』
「……はい、お陰様で」



