嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 母はそう言って、温かいお茶の入った湯呑を美琴に差し出した。


 翌日の昼過ぎ、美琴は帰り支度を整える。

「お父さん、優奈と陽平によろしく言っておいてください。東京に来るときには連絡してって」

 土曜日だが、朝からバイトにいった妹弟に伝言を頼むと父は名残惜しそうな顔をした。

「もう一泊くらいしていけばいいじゃないか。今は仕事もしていないんだし」

「また近いうちにきますね」

 昨日、両親には勤めていた塾を辞めて求職中でだと打ち明けた。智明の件は話していないが、親戚でもある。目処がついたらきちんと説明するつもりだ。

 実家に帰ったことで美琴の気持ちは前向きに整理されていた。

(帰って、遥臣さんとちゃんと話をしよう。申し訳ないけど智明さんの件をお願いして、弁護士さんにかかった費用はあとから少しずつ返していこう。あとは遥臣さんの決めたタイミングであの家を出て行けばいい)

 元々話をするつもりではあったけれど、実は少し逃げたかった。話したら遥臣との関係が終わる現実を見なければいけないから。
 
 そんなのただのわがままだ。遥臣が好きだからこそ、これ以上迷惑はかけられない。