嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

「美琴は昔から智明君をかなり嫌っていたのを知っていたからね。事業には失敗したが、お金のために娘を苦手な相手に嫁がせるほどバカな親じゃないよ。遥臣君との婚約もなくなったし、美琴にはなんのしがらみもなく人生を歩んでほしかったんだ」

「お父さん……」

 なんでもないように言っているが、きっと縁談を受け入れなければ切り捨てると脅されたはずだ。それでも父は美琴の気持ちを優先してくれた。

「僕もここで新しい生活を始めて本当によかったと思ってる。慣れない生活は大変ではあったけど、心はすごく楽になった。僕は見栄っ張りなだけで、経営者の器じゃなかったからね……だから美琴はもうなにも気にしなくていい」

「そうよ美琴、何度も言っているけれど、仕送りもしなくてもいいんだからね」

 電気ポットのお湯を急須に注ぎながら口を開いたのは母だ。

「でも、陽平が大学を出るまではお金がかかるでしょう」

 反論する美琴にむかって父は諭す。

「お父さんもお母さんも働いているんだ。陽平が大学卒業できるくらいのお金はなんとかできる」