嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 陽平は嬉々として肉を平らげていく。男子高校生の食べっぷりに驚く美琴の横で、母と優奈は野菜も食べろと窘め、父は機嫌よく発泡酒を口にする。

 幼いころ、父は仕事で忙しく夕食を共にする機会は少なかったし、母は厳しい祖母にいつも委縮していた。高級な料理や飲み物が並んでも、食卓はどこか殺伐としていた気がする。でも今日の平林家の団らんは、とても賑やかで温かかった。

 食事の後は優奈と陽平はそれぞれの部屋に戻り、両親と三人になる。

 何気ないふりをして、美琴は今日直接聞きたかった話を切り出すことにした。

「そういえばこの前、智明さんに昔、お父さんに私との縁談を申し込んで断られたって聞いたんです」

「智明君に会ったのか?」

 父が目を丸くしてこちらを見る。今平林家は篠宮家に縁を切られた状態だから驚いたのだろう。

「あっ、本当に偶然で、少しお話しただけ」

 美琴は慌てて誤魔化す。

「私が智明さんと結婚していたら、お父さんたちは大変な思いをしなくてすんだんじゃないかなって不思議で。篠宮家の援助も受けられたかもしれないから」

 すると、父は「そういうことか」と軽く息をついた。