嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 家を出たのが夕方だったのでここに着いたのは20時近く。それでも家族は夕食を食べずに待っていてくれた。今日は奮発して焼肉にするらしい。

「これ、お隣さんにもらったキャベツなの。立派よね」

「本当だ、すごく大きい」

「お父さんが同僚の人にもらったリンゴもいっぱいあるから、帰りに持たせるわね」

「ありがとう」

 母の言葉に相槌を打ちながらピーマンを食べやすい大きさに切っていく。

 両親が妹と弟と住むこの賃貸物件は、古い一軒家だ。母の親戚の伝手でだいぶ安くしてもらっているらしい。

 冷蔵庫には町内会のチラシや集まりで撮ったと思われる写真が貼ってあり、壁のカレンダーにはパートやバイトのシフトなど、家族それぞれの予定が所狭しと記入されていた。

 元々一般家庭で育った母はもとより、御曹司育ちの父もここでの生活にすっかりなじんでいるようだ。

「ちょっと美琴、その大きな絆創膏どうしたの?」

 母が美琴の右手の甲を心配そうに見ている。

「あ、えっ、ちょっと不注意でぶつけちゃって」

(言えるわけない。智明さんが持ち出した刃物で怪我したなんて……)