嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 美琴を傷つけ、急に魂の抜けたようにおとなしくなった智明は、迎えにきた父親の秘書に連れられて帰っていった。
 
 遥臣から篠宮家に連絡したらしい。今後は弁護士を通じて対応していき、向こうの出方によっては警察に訴えるつもりだと遥臣は話す。

「証拠も証言もある。弁護士は瀬戸グループで契約している優秀な人間に依頼する。なにも心配しないでいいから」

「ありがとうございます」

 本当は妻ではない自分のためにここまでしてくれる遥臣に、美琴は申し訳なく思いながら頭を下げた。

「美琴、陽菜ちゃんの手術が終わって落ち着いたら話したいことがある」

 真剣な声に頭を上げると、遥臣がじっとこちらを見つめていた。

(きっと、遥臣さんは智明さんの件が解決したら、この結婚生活自体を見直すつもりなんだ)

 美琴もこれ以上、迷惑をかけるわけにはいかないと理解していた。

「はい。わかりました」

「美琴?」

 彼の表情が困惑に変化したのは、美琴が泣きそうな顔をしているからかもしれない。

 それをごまかしたくて、美琴は遥臣の胸に顔を寄せる。
 こうして自分から彼に近づいたのは初めてだ。