嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 顔色を無くした遥臣が美琴に駆け寄るのと、駆け込んできた警備員が智明を取り押さえたのはほぼ同時だった。



「いたた……」

「もう、無茶するから」

 苦い顔で美琴の傷の様子を確認しているのは、理恵子だ。

「まさかナイフ持っている男に突進していくとは思わなかったわよ。……あぁ、切れちゃってるけど、縫うほどじゃないわね」

「ご迷惑おかけして、申し訳ありません」

 美琴は肩をすくめる。夢中で智明へと飛びついた拍子に、右手の甲にナイフの刃が当たってしまったのだ。ほぼ自爆のようなものだ。

「傷も浅いし、痕も残るようなものじゃないわね。本当に良かったわ」

 理恵子は安心したように息をつく。今日彼女は外来の担当日ではなかったのだが、所用があってたまたま南田国際に来ており、騒ぎを聞きつけてきてくれたらしい。

『私が美琴ちゃんの処置をするから、遥臣はその男の後始末頼むわよ』

 理恵子はあの場で冷静に言うと、心配する遥臣から美琴を引きはがし、この処置室に連れて来てくれた。

「あんなに取り乱した遥臣、初めて見たわ」

「相当、びっくりさせてしまったみたいですね」