嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

「そう、どんなに美琴ちゃんをお嫁さんにほしいって頼んでも『結婚は本人に決めさせる』と言って受け入れてもらえなかったんだ。だから父さんも母さんも怒っちゃって平林家を切り捨てたんだよ」

(嘘……じゃないかもしれない。ありえる)

 美琴の心臓は嫌な音を立て続けていた。

 篠宮家は長男と次男の智明のふたり兄弟だ。次期家長である長男は厳しく育てられたが、智明はその反動でずいぶん甘やかされて育ったと聞いていた。

 彼の話が本当なら、美琴の父が智明からの縁談を断ったために、平林家は篠宮家からみはなされたことになる。
 
 もう、なにも言えなかった。

「でも、僕と結婚したらなにもかも昔みたいになる。君は篠宮家の嫁として贅沢な暮らしができるし、おじさん達も東京で新しい仕事をすればいい。援助は惜しまないよ。父さんも母さんも、僕が頼めば何でも聞いてくれるから」

 また一歩智明が近づいてきた。しかし、美琴は今度は動かずに彼を睨みつけた。

「こんなことまでされて、私があなたと結婚すると思う? ふざけないで。昔に戻りたくなんてない」