嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

「大事な僕のお嫁さんを守るためだ。盗聴器だけだよ。カメラは仕掛けてない」

「そんな……っ」

 あのアパートに盗聴器が仕掛けられていたなんて。智明の常軌を逸した行動に、吐き気を覚える。

「ふふ、いい顔。僕は昔からその君の軽蔑したような顔が大好きなんだよ」

 恍惚とした顔で近づく智明に悪寒が止まらない。距離をとるように美琴は後退さる。

「毎日君が大変そうだったから、仕事も辞めさせてあげた」

「どういう、ことですか」

「君の勤めていた学習塾、運よく篠宮の息がかかっていてね。ちょっと圧を掛けて君を辞めさせてもらった。そのあと僕と結婚してもらうはずだったのが、ちょっと予定が狂ったけど」

 なんということだ。美琴が塾の講師の職を失ったのは篠宮家の力を使った智明の仕業だったのだ。

 驚きと怒りで声が出ない。一方智明は興奮気味で話し続ける。

「そもそも、平林のおじさんが事業失敗したときに美琴ちゃんとの結婚を認めてくれていたら、こんな遠回りしなくてもすんだのに」

「お父さんが……」