嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 でも、前向きはことには少しくらい図々しくなってもいいのではないかと思えた。

 次々と制度の必要性について語る美琴。圧に押されるように清香は目を瞬かせた。

「わ。わかったわ、父に話してみる。……でも、必要ないって言われたら?」

「私が必要性をプレゼンします!」

 美琴は即答した。

「すごい勢いでなに言い出すかと思ったら……やっぱり、変な人ね」

 清香は小さく溜息をつき、苦笑した。


 清香と別れた美琴は裏口から駐車場に向かう。足取りは来た時より軽い。

 入院中の子ども学習についてもっと情報を集めて、制度ついて勉強しなければ。

(でも、すごくやりがいがある。遥臣さんにも相談してみよう)

 明るい気持ちで歩いていた美琴は、車の近くに立つ人影に気づき――目を見開いたまま固まった。

 そこに立っていたのはスーツ姿の智明だった。

「美琴ちゃん、会いたかったよ」

 満面の笑みを向けられ、背筋がゾクリとする。

 職員専用駐車場は病院の裏手にあり、関係者以外の人間が立ち入る場所ではない。現に今ここにいるのは智明と美琴だけだ。偶然とは考えにくかった。

「どうして、ここに……」