嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 しかし、それまでの華やかな学生生活とは一変する。
 安いアパートに引っ越し、自ら働き生活費を稼ぐようになった。

 美琴の傍にだれも友人は残らなかった。彼女たちのSNSでは贅沢で華やかな日常がつづられていたが、そのうちすべてを見るのをやめ、アカウントも消した。

 今住んでいるアパートに引っ越したときは人が住む場所じゃないと思ったし、だれかにしてもらうのが当たり前で生きてきたからバイト先でも使い物にならず、すぐクビになった。

 なんとか続けられたファミリーレストランでも最初は『こんな簡単なこともできないのか』と呆れられた。

 それでも、がんばろうと思えたのは『せめて大学は卒業させてやりたい』と父が最後のお金をかき集めて残りの学費を工面してくれたからだ。

 そんな生活の中で、美琴は自分がどれほど愚かだったか痛感する。本当はなにも持っていないくせに、自分自身に値打ちがあると勘違いしていたのだ。

 価値観が180度変わった美琴はそれ以来、謙虚、実直、質素倹約をモットーに生きてきた。