嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

――君は、俺たちの結婚生活が終わる将来に向けて準備しているんだな。

(そりゃそうだろう。そういう約束で“妻”になってくれたんだ。俺は駄々をこねる子供か。どう考えてもぜんぶ俺が悪い)

 心の中で自分に悪態をつく。コーヒーは苦く、家で美琴が淹れてくれる優しい味とは程遠い。

 衝動に任せて奪った美琴の唇は柔らかく、ずっと欲しかったものが得られた気がした。彼女が驚きながらも受け入れてくれていると思ったのは自分の願望だろうか。

 病院から呼び出しの電話がなかったら、あのまま止まれなかったもしれない。

 あのあと、美琴に謝れていない。急患対応と当直が続いて彼女と話し合う時間が取れないのだ。

(とにかくちゃんと時間を作って美琴に俺の気持ちを伝えよう。それに、大事なことをまだ話せていない)

 やはり、黙っているわけにはいかない。彼女としっかり話をする必要がある。

 視線を腕時計に向けると回診の時間が近づいていた。遥臣は気持ちを切り替えるべく冷えかけたコーヒーを喉に流し込み、立ち上がった。


「遥臣!」

 廊下を歩いていると、見知った顔がこちらに手を振って近づいてきた。

「理恵子さん」