しかしふたりの婚約は美琴が大学三年の夏に解消される。平林家の家業が立ちいかなくなったからだ。
直接的な原因は、二年前に亡くなっていた祖父が成長を見込み、買収を重ねた海外の検査機器メーカーの不振。古い経営体質が時代についていけなくなっていたことも影響し、後を継いだ父が必死に立て直そうとしても及ばなかった。一度傾き始めると止められず、あっという間に破綻。父は会社を売却し私財も邸宅も負債にあて、すべて失うことになった。
頻繁に海外へ旅行にいくのは当たり前、値段を気にせず好きなだけ買い物をし、高級店で食事をしていた生活はがらりと変わった。
祖母は祖父のあとを追うように亡くなっていたから、家が没落するのを見ずにすんだのはせめての救いだったのかもしれない。
祖母の実家である篠宮家からも見放され、今まで平林にすり寄ってきた人たちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
当然遥臣との婚約もなくなった。
両親は妹と弟を連れ、母の親戚の伝手で長野県松本市に引っ越す。父はなんとか地元の企業に採用され、母はスーパーのパートに出た。
美琴はひとり大学を卒業するために東京に残った。
直接的な原因は、二年前に亡くなっていた祖父が成長を見込み、買収を重ねた海外の検査機器メーカーの不振。古い経営体質が時代についていけなくなっていたことも影響し、後を継いだ父が必死に立て直そうとしても及ばなかった。一度傾き始めると止められず、あっという間に破綻。父は会社を売却し私財も邸宅も負債にあて、すべて失うことになった。
頻繁に海外へ旅行にいくのは当たり前、値段を気にせず好きなだけ買い物をし、高級店で食事をしていた生活はがらりと変わった。
祖母は祖父のあとを追うように亡くなっていたから、家が没落するのを見ずにすんだのはせめての救いだったのかもしれない。
祖母の実家である篠宮家からも見放され、今まで平林にすり寄ってきた人たちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
当然遥臣との婚約もなくなった。
両親は妹と弟を連れ、母の親戚の伝手で長野県松本市に引っ越す。父はなんとか地元の企業に採用され、母はスーパーのパートに出た。
美琴はひとり大学を卒業するために東京に残った。



