嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 そんなことを考えていた数日後、担当している患者、横沢陽菜の病室に向かう。
 度重なる眩暈を切掛けに来院した彼女は脳の血管が細くなる病気に罹っており、現在は手術に向け入院しながら投薬で症状を安定させている状況だ。

 入院が長引くにつれ寂しさや焦りを感じているだろうに、陽菜はいつも明るい。遥臣が顔を見せると喜ぶので時間があれば病室に寄るようにしている。

 このときもいつものように病室に入ろうとしていたのだが、ピタリと足が止まった。

 美琴がベッドの傍らの椅子に腰かけ、陽菜の手を握っていたのだ。

『陽菜ちゃん、勉強は無理のない範囲でしっかりやっていこう。そのほかでも私が力になれることがあったら言ってね』

 遥臣は短時間を条件に陽菜の学習指導の許可を出したのを思い出す。その講師が美琴だったらしい。

『えー、急に熱くなってどうしたの?』

 気恥ずかしいのか、おどける陽菜。

『とにかく、なんでも相談にのるからね』

 陽菜を元気づけようとする美琴の表情は、包むように優しく、いつか迷子の子どもに向けた笑顔と重なった。
 つい目を奪われていた遥臣は、我に返り病室に入る。

『ひさしぶり、美琴さん』