嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 これまで見てきた強気な態度とは違う、柔らかく優しい表情に遥臣は内心驚いていた。
 もしかしたら、美琴の人としての本質はここにあるのではないかと。

 しかし、このあとふたりの婚約は予想外の理由で解消された。平林家が事業に失敗し会社を手放すことになり、先方から申し出があったらしい。

 父に婚約解消を伝えられても、遥臣は冷静だった。
 聞けば、会社を失っても平林家は美琴の祖母の実家である篠宮家が援助するので、生活には困らないという。

(会社を手放すのは気の毒だけど、彼女にとっては良かったんじゃないか。どちらにしても俺たちの結婚は無かっただろうし)

 血筋も育ちもいい美琴なら、すぐに次の縁談も見つかる。きっと彼女の望む “格の合う相手”と結婚できるだろう。

 なぜか心に穴が開いたように感じたのは、長年当たり前のようにあった“婚約者”という存在を失ったからだと思っていた。