嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 大きな銀杏の木の下には不安そうにキョロキョロしている三歳くらいの女の子が立っていた。

『本当だ、周りに大人がいない』

 遥臣が返事をし終わる前に、美琴はためらいなくその子に近づき、柔らかい笑顔で声をかけた。

『こんにちは、ひとり? ママかパパはどうしたのかな?』

 女の子は『ママいないの』と泣き出してしまった。
 美琴は慌てて膝をつきその子に目線を合わせる。高級品の服やブランドのバッグが汚れることなどまったく気にしていない動作だった。

『そっか、きっとママも捜しているね。お姉さんが、ママに会える場所に連れて行ってあげる。大丈夫だよ、絶対ママに会えるから』

 泣きじゃくる子どもに美琴は安心するように笑いかけ、ハンカチで涙を拭いてやり優しく抱き上げた。

『お母さんを捜しながら、本部に向かおうか。呼び出してもらえるかもしれない』

 遥臣の提案に美琴はうなずいた。結局本部で母と会えたのだが、女の子はずっと美琴にくっついていた。

 何度も頭を下げる母親に、美琴は『会えてよかったです』と笑い、女の子に手を振って別れた。