嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして

 当時から恐ろしく整っていた遥臣は王子様のようにキラキラして見えた。
 美琴は精いっぱいの虚勢を張って『よろしくお願いします』と淡々と返した。遥臣がかっこいいと認めると負けだと思ってしまうほど、小学生にして美琴のプライドはエベレスト並みに高くなっていたのだ。

 美琴を頑なにさせたのは、この縁談に乗り気ではなかった祖母の影響もあった。
 祖母は美琴を篠宮家当主である自分の兄の孫、大甥のだれかと結婚させたがっていたからだ。

 祖母の『瀬戸家はうちより格下なのに』という愚痴を聞いていたので、美琴も自然と遥臣を見下すようになってしまった。

 婚約者といってもまだ子供だったふたりは年に数度会うくらい。

 たまにふたりでどこかに出かけても『退屈だわ』と言い放ち、なにかプレゼントをもらっても『平凡ね』と一蹴する。
 わがままな美琴に対し、遥臣はいつも困ったような笑顔を浮かべていた。今思えば親の言いつけでしかたなく美琴に会っていたのだろう。

『胡散臭い顔で笑う、何を考えているか分からない人』美琴は彼のことをそう思うようになっていた。