今日の体育はバレーでコートを作った。女子と男女は別々だ。だけど皆女子は男子の方をチラチラ見ている。
　大体の女子の目線の先は加瀬冬架で私はその人は腹黒いですよーって言いたくなる。でもきっと私がそんなことを言っても女子たちは加瀬冬架をみるだろう。
　何故ならあの白馬の王子様が腹黒いなんて到底考えられないから。
　でも私はあんなやつ見ない。あのにこにこした笑顔。
　吐き気がする。
　
「ねぇねぇ、今の加瀬くん見た？かっこよすぎじゃない？」
「分かる！！かっこいいよね！！」

　ちらほら聞こえてくる女子の囁きは加瀬冬架のことで私は嫌気がさした。
　何であんなやつがいいんだろう。

　やっと体育が終わったら昼休みの時間で今日は桜子が居ないからどこで食べようか迷っていると机の中には白い紙が入っていて嫌な予感がした。私は恐る恐る紙を開くと南校舎の2階にある空き部屋に来てと書いてあって私は行くことにした。だって送り主はきっと

「やっと来た。遅すぎね。俺にあの事ばらされたいわけ？」
「い、いやそういう訳では……」
「まぁ、とりあえずここに座りなよ」

　そう言って加瀬冬架が指でさしたところに私は遠慮して座る。
　しばらくの間沈黙で私は気まずさでお弁当をぱくりと食べた。

「てか、古川さんのお弁当美味しそ」
　
　それは「くれ」って言う意味なのか。私は疑問に思って
「食べたいんですか」

　そう私が言うと急に加瀬冬架は笑いだして
「な訳ないじゃん。俺、女苦手だし」

　訊いた私がバカだったと私は後悔した。恥ずかさで私は下を向く。
　加瀬冬架は女嫌いだと？いつもにこにこして女子に振る舞っているあの加瀬冬架が？
　というか何で私を呼んだんだろう。そう私は疑問に思ってしまう。だって加瀬冬架と接点はあまりないしあまり喋ったことがない。喋ったことがあるのはこの前具合が悪くなった時だけ。
　それなのに私を呼んだ理由がよく分からなかった。

「あの、何で私を呼んだんですか」
　
　そう恐る恐る訊くと
「古川さん。バカな訳？決まってるじゃん。パシる為」

　私はカチンときた。だってパシるって。王様でもないんだから私を使うなって話し。
　でも当たり前にそんなことを私は言えなくて。

「そ、そうなんですね」
「あー。そうそう。古川さん、連絡先教えて」

　連絡先？なぜ私が加瀬冬架に？

「何でですか？……」
「そりゃあ、決まってじゃん。いつでも古川さんをパシれるためだよ」

　そうにやりとして加瀬冬架は言ったから私は目線を反らす。
　あの加瀬冬架と、連絡先を交換する？
　そこら辺にいる女子は喜ぶかもしれない。やったぁと。
　でも私は違う。私は加瀬冬架が嫌いだ。笑うところも優しく振る舞うところも全て嫌いだ。
　それなのに連絡先を交換するなんて吐き気がする。

「えっと私は携帯もっていないので……」
「はははっ」

　何で笑うのと疑問に思って加瀬冬架を見ると
「古川さん、電車の時のあれは？」
「……」
「持ってるよね」
「はい、、持ってます」

　そう言って私は携帯を加瀬冬架に差し出した。