【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。

「ひ、光田くん、すごいね。光田くんのお陰であっという間に駐車場が綺麗になった!」

 嬉しさのあまり、思わず律くんと目を合わせてしまう。一瞬だけ微笑んでくれたけれど。

いつものように無表情になり、クールに頷きながら目をそらす律くん。目をそらされて気持ちはすぐに現実へと戻っていった。

律くんは、僕に銀色シャベルを渡すと、土の袋を畑まで持っていってくれた。僕は律くんの背中を呆然と見つめながら、ひとりではしゃいだ恥ずかしさと、やらかしてもっと嫌われてしまったかな?と、喪失感に苛まれていた。

律くんは、ひとつだけではなく、物置にある五つの袋を僕と一緒に運んでくれた。それだけではなく雑草を抜くのも手伝ってくれた。さらに、元々畑にある土と袋の土を混ぜて馴染ませる作業までしてくれた。全ての作業が終わると律くんは手についた土をほろいながら畑全体を確認し「じゃあ、戻るわ」とだけ言葉を残すと、自分の家、一〇二号室にそそくさと戻っていった。

 どうしよう、たくさん手伝ってくれたのに、きちんとお礼を言えてない。チャイムを鳴らしてあらためてお礼を言うのも迷惑かも知れないし、次に会えた時、直接話しかけるのも緊張する。手紙を書いて郵便受けに入れておこうかな。文章だったらきっと、上手く伝えられる気がする。

 外の片付けを済ますと、居間にいたお母さんから便箋と封筒をもらって、自分の部屋に行く。そして机に向かい、律くんへのお礼の文章を考えた。

 手紙の文章と一緒に、嫌われているのに何で手伝ってくれたんだろうとも、たくさん考えた――。