それからずっとどんよりとした気持ちのままで、午後からの授業は集中できなかった。そして遂に、放課後がやって来た。律くんが、律くんのことが好きな女の子と会う時間が近づいてきている。
「律、今日もカラオケエターナルで待ち合わせな」
袴田くんは先に出ていく。
律くんもすぐに出ていくのかなと思ったけれど、僕の席の方に向かってきた。
「由希くん、また明日の朝な。じゃあ……」
「うん、ばいばい!」
僕は無理やり口角を上げて、軽く手を振った。
律くんの背中を見送る。
「はぁ、帰ろっと」
しょんぼりと落ち込みながら僕は帰宅した。
家に帰ると、すぐに部屋の中に閉じこもった。
律くんと、その子はもう会ってしまったのだろうか。話が弾み、親しくなってしまったのだろうか。袴田くんは僕たちがカラオケに行った時にいたと言っていたな。あの時は歌いたくない気持ちで余裕がなくて、人を見ていなかった。顔を全く覚えていないけれど、その子のことが憎くなってきた。なんか自分の性格が歪んできて自分のことも嫌になってきた。もう、何もかも、嫌だ――。
とりあえず僕は、ふて寝した。
目覚めると少し薄暗くなってきていた。
寝たら若干気持ちは落ち着いたものの、律くんたちが気になりすぎて落ち着かない。
そんな時は、畑に行こう。
ため息をつきながら外に出た。
律くんの家の中には、誰かがいる気配はない。
まだ帰ってきていないのか……。
心がモヤモヤする時はミニトマトのお世話になる。そして気持ちをミニトマトに向かって吐き出すと気持ちが少し落ち着く気がしている。一種のおまじないのような感じだ。ミニトマトの前に来るとしゃがんだ。夕暮れ時の畑は静かで、赤い空の色と似ている色のミニトマトは他の花たちよりも目立っていた。
「あぁ、律くんたちが今、漫画でよくあるふたりで抜け出そう展開になっていたらどうしよう。僕がもしも律くんと恋人だったら『行かないで』って素直に言えて、こんな嫌な思いしなくても良いのかな? というか恋人って何? もしも律くんが今日、その人と付き合い始めたらどうしよう。その人が律くんの一番になって、僕は二番目になるのかな。そんなの耐えられない。嫌だな、嫌だ……本当に嫌だ。僕の律くん――」
「由希、くん?」
ちょうど僕が律くんの噂をしていた時、律くんの声が背後から聞こえた。
「律、今日もカラオケエターナルで待ち合わせな」
袴田くんは先に出ていく。
律くんもすぐに出ていくのかなと思ったけれど、僕の席の方に向かってきた。
「由希くん、また明日の朝な。じゃあ……」
「うん、ばいばい!」
僕は無理やり口角を上げて、軽く手を振った。
律くんの背中を見送る。
「はぁ、帰ろっと」
しょんぼりと落ち込みながら僕は帰宅した。
家に帰ると、すぐに部屋の中に閉じこもった。
律くんと、その子はもう会ってしまったのだろうか。話が弾み、親しくなってしまったのだろうか。袴田くんは僕たちがカラオケに行った時にいたと言っていたな。あの時は歌いたくない気持ちで余裕がなくて、人を見ていなかった。顔を全く覚えていないけれど、その子のことが憎くなってきた。なんか自分の性格が歪んできて自分のことも嫌になってきた。もう、何もかも、嫌だ――。
とりあえず僕は、ふて寝した。
目覚めると少し薄暗くなってきていた。
寝たら若干気持ちは落ち着いたものの、律くんたちが気になりすぎて落ち着かない。
そんな時は、畑に行こう。
ため息をつきながら外に出た。
律くんの家の中には、誰かがいる気配はない。
まだ帰ってきていないのか……。
心がモヤモヤする時はミニトマトのお世話になる。そして気持ちをミニトマトに向かって吐き出すと気持ちが少し落ち着く気がしている。一種のおまじないのような感じだ。ミニトマトの前に来るとしゃがんだ。夕暮れ時の畑は静かで、赤い空の色と似ている色のミニトマトは他の花たちよりも目立っていた。
「あぁ、律くんたちが今、漫画でよくあるふたりで抜け出そう展開になっていたらどうしよう。僕がもしも律くんと恋人だったら『行かないで』って素直に言えて、こんな嫌な思いしなくても良いのかな? というか恋人って何? もしも律くんが今日、その人と付き合い始めたらどうしよう。その人が律くんの一番になって、僕は二番目になるのかな。そんなの耐えられない。嫌だな、嫌だ……本当に嫌だ。僕の律くん――」
「由希、くん?」
ちょうど僕が律くんの噂をしていた時、律くんの声が背後から聞こえた。



