【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。

 ところで、律くんは何故僕が小さい頃に砂場遊びで使っていたシャベルを持っているの? たしかこれは、いつの間にかなくしていたやつ。一瞬、律くんと小さい頃に公園で遊んでいた時の記憶が浮かび上がる。

「こ、これ、何で、持ってるの……?」

 僕はシャベルと目を合わせながら小声で言葉を絞り出した。

「俺は、これ使うから」

 律くんは、僕の質問を完全にスルーした。そしてアパートの物置の中にあって、畑のところに後から持ってく予定だった銀色のシャベルを右手に持っていてアピールした。律くんの言葉と同時に、タイミングよくキラリと輝くシャベル。

「て、手伝って、くれる、の――?」

 僕の視界の端にいる律くんが「うん」と頷いてくれた。律くんの意思を確認した後、僕は砂場シャベルを受け取る。律くんの指が触れて心臓が激しく高鳴ったが、必死にそれを隠した。

 律くんが銀色シャベルで土をすくいだしたから、僕も後を追い作業を再開させた。

土がほぼ袋の中に収まると、水まきのホースを引っ張ってきて、駐車場の微かに残る土を流す律くん。律くんの無駄と隙のない動きで作業は終わり、土をばらまく前よりも綺麗になった。

――はぁ、律くんのお陰で、永遠の蟻地獄から開放された。

 僕はほっと胸をなでおろし、開放感を得て自然と口角が上がる。