【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。

 由希くんは鍋と他にも洗うものを持ち、水場へ向かおうとしている。俺も手伝おうとした矢先、俺より先に安倍が由希くんに「一緒に洗うよ」と洗剤とスポンジを手に持ち、声を掛けた。

「綿谷くん、優れない顔してるけど、体調大丈夫?」
「うん、大丈夫。でも少し疲れたかも」
「ここで休んでる?」
「ううん、鍋洗いに行く」
「じゃあ、行こうか」

 由希くんは安倍に背中を支えられながら歩いていった。その光景を見て、モヤモヤとイライラが合わさる。しかも姿を消してからふたりはなかなか戻ってこなかった。

「片付け終わったら、サッカーしない?」と、袴田が誘ってきた。

「いや、サッカー苦手だしやらない」と、杉山は断る。
「律はやるしょ?」
「俺は……」

 由希くんと一緒に過ごしたいと、パンフレットをチェックした時からずっと思っていた。昼飯の後は自由時間になりそうだと知ると、由希くんの好きそうなところでのんびりしたいと、密かにスマホでも公園を調べて計画を立てていた。由希くんには何も伝えていなかったけど――。だけど、その計画も今となっては実現しなさそうだしな……。

 誘いに乗ろうとした時、由希くんたちの姿が見えた。由希くんは目が赤くなっていて、泣いた後のようだった。安倍に頭をなでられていて、ふたりは親しそうな雰囲気。きっと由希くんが心のモヤモヤを安倍に伝えたのだろう。

 ふたりから視線を外せなかった。
 現実から目をそらせなかった。

 由希くんの隣にいるのがなぜ自分ではないのか――。
 由希くんがモヤモヤを打ち明ける相手はなぜ自分ではないのか――。

 俺は今、完全に安倍に対して嫉妬心がむき出しだった。