【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。

「美味しい、由希くんすごい」
「いや、ただルーの箱に書いてあるとおり野菜切って入れて、水入れて煮込んで。そして最後にルーを入れるだけだからね」

 由希くんは謙虚な言葉を返しながら、泣きそうな笑顔をクラスメイトに見せていた。

 まだ一口も食べていない由希くん。由希くんのお皿にはご飯とカレー、そして隅には袴田が焼いた肉も乗っていた。由希くんが戻ってきて食べ始めるのを確認すると、俺もタイミングを合わせて食べ始めた。

「由希くんが作ったカレー、美味しい……」

 由希くんが作ったカレーは、自然と言葉がこぼれるくらいに美味しかった。大好きな由希くんが作ったから余計に美味しいのだと思う。

「美味しいって言ってくれて、ありがとう」と、目を合わせず、ニコリともせずに由希くんは言った。あきらかにいつもとは違う由希くん。やっぱりトマトが嫌いなことを隠していたこと、怒っているのだろう。

「カレー美味いな、まだあるの?」と、すでに食べ終えた袴田が由希くんに声をかけた。

「うん、あと一食分ぐらいあるよ」
「食べていい?」
「うん、いいよ」

 最後の一食分のカレーが袴田のお皿に注がれようとしていた。

「お、俺も、欲しい」
「……じゃあ、半分こね」

 この状況の中、勇気を振り絞りふたりの会話に横入りした。一瞬由希くんの動きは止まり答えてくれるまで間があったが、俺の皿にもカレーを注いでくれた。本当は独り占めしたかったけれど、半分もらえるだけでもありがたい。

 この後、由希くんとふたりになるタイミングは訪れるだろうか。早く謝りたい――。

 由希くんが作った貴重で最高なカレーを大切に食べた。最後の一口はもったいなくて口に入れるのを躊躇した。

 うちの班は、肉もカレーも綺麗に完食し、片付けを始めた。

「結局、杉山は肉をあんまり好きじゃないって言ってた割にはたくさん食べてたじゃん」
「ここで食べる肉は……美味しかった」
「ここっていうか、俺が焼いたからだろ?」
「……」

 袴田と杉山が話しながら肉を焼いていた辺りのゴミや網を片付けている。