俺は淀んだ息を深く吐いた。
「夏になったらふたりでトマトを収穫して、一緒に食べるんだ!」と、はしゃぎながら言っていた由希くんの言葉、表情を鮮明に思い出す。
また傷つけてしまったのかもしれない。原因は、俺がトマト嫌いなのを隠していてバレたから。
由希くんがミニトマトを配りながら見せる笑顔を眺め、受け取るとミニトマトをじっと見つめた。
口の中に入れるのを想像するだけで、酸っぱくて、ぐにゃっとした食感を思い出した。「律くんの分もあるからね」と言いながら目を輝かせている由希くんの姿を見ていたら、ミニトマトが嫌いなんて言えなかった。
勢いに任せてトマトを口に入れた。
口に入れた瞬間に広がる酸味に顔が歪みそうになった。だけど由希くんの笑顔を思い浮かべてなんとか飲み込んだ。隠し通せたと思っていた矢先、袴田が何気なく俺のトマト嫌いの話を由希くんの前でしてしまった。
由希くんの曇った顔を見た瞬間、胸がズキッと痛んだ。もっと前に打ち明けていたら良かったと後悔した。由希くんは頑張って笑顔を作っていたけれど、今がもしも遠足中ではなくて、クラスメイトがいなかったのなら泣いていそうな表情だった。
――俺ってもしかして、由希くんと関わらない方がいいのか?
由希くんは鍋を持ち、近くのレジャーシートで弁当を食べているグループのところへ行った。鍋を芝生の上に置くと由希くんはその場にしゃがんだ。おたまでカレーをすくい、クラスメイトたちの弁当箱にあるご飯の上にカレーをかけていると他のクラスメイトも集まっていて、いつの間にか行列ができていた。
注目を浴びるのが苦手そうな由希くんの元へ今すぐに行きたい、そして助けたい。だけど、行けない――。
「夏になったらふたりでトマトを収穫して、一緒に食べるんだ!」と、はしゃぎながら言っていた由希くんの言葉、表情を鮮明に思い出す。
また傷つけてしまったのかもしれない。原因は、俺がトマト嫌いなのを隠していてバレたから。
由希くんがミニトマトを配りながら見せる笑顔を眺め、受け取るとミニトマトをじっと見つめた。
口の中に入れるのを想像するだけで、酸っぱくて、ぐにゃっとした食感を思い出した。「律くんの分もあるからね」と言いながら目を輝かせている由希くんの姿を見ていたら、ミニトマトが嫌いなんて言えなかった。
勢いに任せてトマトを口に入れた。
口に入れた瞬間に広がる酸味に顔が歪みそうになった。だけど由希くんの笑顔を思い浮かべてなんとか飲み込んだ。隠し通せたと思っていた矢先、袴田が何気なく俺のトマト嫌いの話を由希くんの前でしてしまった。
由希くんの曇った顔を見た瞬間、胸がズキッと痛んだ。もっと前に打ち明けていたら良かったと後悔した。由希くんは頑張って笑顔を作っていたけれど、今がもしも遠足中ではなくて、クラスメイトがいなかったのなら泣いていそうな表情だった。
――俺ってもしかして、由希くんと関わらない方がいいのか?
由希くんは鍋を持ち、近くのレジャーシートで弁当を食べているグループのところへ行った。鍋を芝生の上に置くと由希くんはその場にしゃがんだ。おたまでカレーをすくい、クラスメイトたちの弁当箱にあるご飯の上にカレーをかけていると他のクラスメイトも集まっていて、いつの間にか行列ができていた。
注目を浴びるのが苦手そうな由希くんの元へ今すぐに行きたい、そして助けたい。だけど、行けない――。



