ドアの隙間から顔を覗かせたのは、律くんだった。瞳の中に光のない状態で、ばらまかれた土をじっと見ている律くん……。呆れすぎているように見えるその表情。
「ご、ごめんね。今すぐに土を拾うから」
慌てながら僕は軍手をはめた両手で土をすくって袋の中に戻した。何回も何回もその作業を必死に繰り返す。繰り返すが、かなりの量をばらまいていて作業の終わりがみえない。段々と、ばらまいてしまった土が、永遠の蟻地獄のように見えてきた。
ふと一〇二号室のドアに視線を向けると、僕を見ていた律くんの姿が消えていた。
――ひと言も言葉を発することなく、いなくなってた律くん。相当呆れていると思う。自分の家の駐車場を汚されて、嫌な気分になっちゃったよね。
僕は涙目の状態で下を向き、ひたすら土をすくい続けた。少し経つと目の前に、見覚えのある砂場遊びの黄色いシャベルが、糸にぶら下がった蜘蛛のように、ぬっと降りてきた。
砂場遊びシャベル、シャベルを持っている誰かの艶やかで美しい手、そして腕を通り誰かの顔へと視線を繋げていく。顔を上げると、ばちっと目から音がこぼれるくらいな勢いで律くんと、目が合った。気配で律くんだと察してはいたけれども、こんな近くで目が合ってしまうと動揺しすぎる。風切音が聞こえそうな速さで目をそらした。そらしてしまった。
僕、感じ悪かったかな――。
「ご、ごめんね。今すぐに土を拾うから」
慌てながら僕は軍手をはめた両手で土をすくって袋の中に戻した。何回も何回もその作業を必死に繰り返す。繰り返すが、かなりの量をばらまいていて作業の終わりがみえない。段々と、ばらまいてしまった土が、永遠の蟻地獄のように見えてきた。
ふと一〇二号室のドアに視線を向けると、僕を見ていた律くんの姿が消えていた。
――ひと言も言葉を発することなく、いなくなってた律くん。相当呆れていると思う。自分の家の駐車場を汚されて、嫌な気分になっちゃったよね。
僕は涙目の状態で下を向き、ひたすら土をすくい続けた。少し経つと目の前に、見覚えのある砂場遊びの黄色いシャベルが、糸にぶら下がった蜘蛛のように、ぬっと降りてきた。
砂場遊びシャベル、シャベルを持っている誰かの艶やかで美しい手、そして腕を通り誰かの顔へと視線を繋げていく。顔を上げると、ばちっと目から音がこぼれるくらいな勢いで律くんと、目が合った。気配で律くんだと察してはいたけれども、こんな近くで目が合ってしまうと動揺しすぎる。風切音が聞こえそうな速さで目をそらした。そらしてしまった。
僕、感じ悪かったかな――。



