【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。

 話は現実に戻り、これから雪の下で凝り固まった土をふかふかにして、トマトたちの心地よい寝床を作ります! そう、大事な部分だから何度も繰り返したい。植える前には土をふかふかにする作業をする。苗たちの居心地が良くなるように、土を耕す作業だ。

 今年は「いい土だから、足して使えばいいべさ~。栄養も蓄えた土だ~」と、ここの畑を作ってくれたおじさんが、ギュウギュウに土が入っている大きな袋を五袋も置いていってくれた。今、それらはアパートの左側にある物置に入っていた。

 もらった土をアパートの物置から畑に移動させる作業から始まる。左から右へ――。

 朝の長ネギ納豆ご飯を食べ終えて、中学の時に着ていた紺色ジャージと白Tシャツに着替え「よし、頑張るぞ!」と気合いを入れた。

「由希、ひとりで大丈夫かい?」と、玄関で長靴を履いていた僕に、お母さんが質問する。

「大丈夫だよ! もう高校生だし。畑仕事は腰にくるから……お母さんはゆっくりしていて?」
「分かった。ありがとね! でも無理はしないで、助けて欲しいことが何かあれば、すぐに呼ぶんだよ」
「うん、分かった。じゃあ、畑作ってくるね」

 明るい笑顔を作ってそう言うと、外に出た。

 僕はお母さんとふたりで暮らしていて、昨年はお母さんとふたりで畑を耕した。その時にお母さんは腰を痛めて動けなくなってしまった。今はもう治ったけれど……お母さんには無理をしてほしくないし、僕ひとりで今年はやるんだ!と、意気込んではみたものの――。

「あ、ばらまいてしまった……」

 土の袋を運ぶ途中に通る駐車場の上に、おもいきり土をばらまいてしまった。しかも、うちのところではなく、一〇二号室の住人が使う駐車場に。

 よりによって一〇二号室は律くんち……。

 僕は立ちすくみ、ただぼんやりとばらまいた土を眺めた。眺め続けていると、一〇二号室のドアが、静かに開いた。