【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。

 背筋が凍った。由希くんの低い声が背後から突き刺さる。振り返ると、ランドセルを背負ったままの由希くんが眉尻を下げ口を開けたまま立っていた。小学四年生の時の記憶だけど、その時の由希くんの声、表情をはっきりと覚えていて、今も夢に由希くんのその姿が現れる。 由希くんの声は怒りで震えていた。

「きゅうり、まだ復活するかもしれないのに……。なんで、抜いたの?」

由希くんの目からは涙が溢れ、ぽろぽろとこぼれてくる。

「意地悪な律くんなんて、嫌だ。嫌い……」
「意地悪したわけじゃなくて……」

事情を説明して、謝りたかった。でも、言葉が喉に詰まり、まるで岩のように重くなっていく。頭が真っ白になる。由希くんが俺に絶望する様子を見せるたびに、許される方法を考えるほどに、心が凍りついてきた。

 「嫌い」。

由希くんの言葉が、鋭い刃のように胸に突き刺さった。俺の心は切り裂かれていく。息が詰まり、視界が滲む。

 痛い。苦しい。悲しい――。

すべての負の感情が波のように押し寄せ、俺を飲み込んだ。由希くんの涙と言葉が、俺の心を締め付けた。

――由希くんに嫌われた。俺が勝手に苗を抜いたせいで、由希くんを傷つけた。さっさと部屋に行けば良かったな。いや、勝手に抜かなければ良かった? 気持ちを伝えて、捨てようとする前に相談すれば良かった?

 意地悪をしたくて、抜いたわけじゃない。
 由希くんのために、そうしたんだって。

 早く誤解を解かないと……嫌われたくない――。
  
「由希くん、俺……その、悲しむのが嫌だったから……」

 謝ろうとしたけど、言葉が喉に詰まってしまい、上手く伝えられない。どうしようと考えるほどに頭の中が真っ白になっていき。

 由希くんは、泣きながら走って家に帰ってしまった。俺は畑の前で一人、呆然と立ち尽くした。